■粘土瓦の種類
粘土瓦は生産方法や材質の違いから、いぶし瓦、釉薬瓦、無釉瓦の3種類に大別されます。
- 1.いぶし瓦
いぶし瓦のいぶしの銀色は日本の町並みの美しさを代表する色合いであり、安土桃山時代に織田信長の依頼により唐人一観が安土城築城のために製造したものが最初であると言われています。いぶし瓦以前の瓦はどのようなものであったのかと言えば、現在のような銀色ではなく、黒い瓦に様々な色の焼きムラのあったもののようです。
いぶし瓦は、他のセラミック製品ではおこなわれていない粘土瓦に固有の特殊な製造方法をおこないます。三州では成形・乾燥した瓦を1,130度程度に焼き締めた後、瓦を密閉した状態にしてブタン、プロパンなどのガスを窒素などで希釈して窯に打ち込みます。高温で密閉された状態でガスは燃焼せず、粘土瓦表面に炭素被膜を形成し、いぶし瓦の光沢を発色します。
いぶし瓦は施工後、屋根の上での風雨などにより、炭素によって形成されたいぶし皮膜が磨耗し、いぶしの屋根独特の色ムラをもった味わいのある屋根へと変化していきます。
いぶし瓦は焼成の難しさから、粘土瓦の中でも特に高級品とされています。
- 2.釉薬瓦
釉薬瓦は、粘土瓦の成形・乾燥の後、ガラス、粘土、酸化金属などを調整した釉薬を塗布して、1,130度程度で焼き上げます。いぶし瓦とは異なり、窯を密閉することはおこなわず、空気を十分に供給した酸化焼成という焼成により、釉薬に含まれている酸化金属の色を呈色させます。釉薬瓦にもいぶし瓦の色合いと似た発色をさせたものがありますが、釉薬に含まれた酸化金属の色であり、いぶし瓦の炭素被膜によるものとは異なっています。
釉薬瓦は様々な色種を生産することができ、大量に安定して生産することにも向いています。
- 3.無釉瓦
無釉瓦は焼成前に釉薬を塗布しない以外は、釉薬瓦と同じ製造方法をおこないます。主に粘土中に含まれる酸化鉄により、赤褐色の色合いをしていますが、酸素を絞った還元焼成という焼成方法により、色ムラを持った窯変瓦と呼ばれる瓦を製造する場合もあります。
西欧の古い建築で見られる、南欧地域の白く粉を吹いたような粘土瓦や、ドイツ、イギリスなどの黒ずんだ赤い色の粘土瓦は、もともとは無釉瓦ですが、現在では品質が向上し古い瓦のような変色がおきにくくなってきているため、釉薬を使用し同様な色あいのものを製造しています。